りんごの木を植える。

高校の友だちが毎日更新してるので、ぼくも続けてみようと思います。

2021/03/19 ”あたしは月のように死ぬから”

まだ自我も芽生えたての時分、超常現象やオカルトなどの話には、誰もが一度ははまったのではないか。

自分もご多分に漏れずで、特に小学校低学年の時などは、好きな本はムーだったし、講談社KK文庫を学校で回し読みしていた。

特に好きだったテレビ番組はアンビリーバボーで、ビートたけしの司会進行に時に身の毛がよだつ思いをしながら、時にワクワクしながら放送を楽しんでいた。

 

前世の記憶のある人間の話は、オカルト話のよくあるコンテンツだ。

前世で殺された人間が生まれ変わってから、前世の時分を殺した犯人を見つけ出すような勧善懲悪的な話もあれば、前世の両親に会いに行くという心温まる話もあった。

人の死後における霊魂の行方は、古から人類の大きな関心事だった。

 

そんな題材をかじりながら、とある枝がひとつの幹に収まっていくような感覚を感じる小説。

なにが主題だったのか、いまだにすっきりしないのは、日頃から考えることを放棄してきたツケかもしれない。

 

主人公はかなり頑固だ。よく言えば真面目な常識人で、悪く言えば頑固で、僕から見るとつまらない人間に思えた。しかし、主人公の心理状態の変化が、物語のはじめと終わりで大きく変わる。本来なら認めたくないことを、認めざるを得ない。いや、本当は気づいていたのに、本能的に拒絶していた事実に向き合わざるを得なくなる。

もう一人の重要人物は、生まれ変わりの女性。彼女は昔の記憶を積み重ねながら、何度も生まれ変わり、その度に過去の記憶を積み上げていく。

 

変わらないものと、変わっていくもの。

そんな対比が、主題にも思えた。

 

神様がね、この世に誕生した最初の男女に、二種類の死に方を選ばせたの。ひとつは樹木のように、死んで種子を残す、自分は死んでも、子孫を残す道。もうひとつは、月のように、死んでも何回も生まれ変わる道。

月の満ち欠け

月の満ち欠け